東浩紀さんが良い。

 

ゆるく考える

ゆるく考える

 

 

東浩紀さんの「ゆるく考える」を読んだ。

すごくよかった。それでこのエントリーを書いている。

 

東浩紀さんについては、私は「存在論的、郵便的」「動物化するポストモダン」「ゲンロン0 観光客の哲学」を読んできた。

これらは東さんの主著にあたる。

でもそれ以外はあまり読んでこなかった。

テレビやメディアでの活躍や、ゼロ年代にネットで行っていた活動や、ゲンロンでの動向はあまり詳しくフォローしてきていない。つまり私は、それこそ「ゆるく」追って来たと言える。

 

それでも、上記の3冊は本当に素晴らしく、特に「ゲンロン0 観光客の哲学」は圧倒的だった。感動さえした。もっともっと評価されるべき1冊だと思う。それで近年はどんどん東浩紀さんについて熱心に追うようになってきた。

今の東浩紀は素晴らしい。

その前から尊敬していたけれど、最近は確信に近くなった。以前は、凄いけどちょっと尖っているような感じもあって近づきがたい気持ちもあったんだけれど、最近の東さんは、何というか懐が深くなった。文章がすごく温かくなったような感じがする。ちょっと悲観的なことを語っていても、ああこの人は心を込めて誠実に考えているんだな、というのが分かる。

 

この本には、2008年から2018年までのいろいろな文章が収められている。東さんの変遷が追える。

今の東浩紀は、この本のタイトルの通り、ゆるやかな構えでものごとを考え、文章を書いている。これがさまざまな経験を経た後で、東さんが達した境地だと言える。これこそが選び取るべき方向なのだと確信した上で行っている。そしてそれが東浩紀さんの哲学や批評にきちんと深く裏づけられている。デビュー作の「存在論的、郵便的」からたどってきた思想や人生がすべてここにきちんと繋がってきているのだ。それは感動的ですらある。

東さんはいま「郵便論的」に活動し、文章を書こうとしている。

それはゆるく、人間の浅薄さやいい加減さや弱さを受け止めた上で、それでも善きことを目指そうとする姿勢のように思える。あたたかさがある。そして射程距離が長い。東さんは今そういう文章を意識的に書けるところに達している。

本書にはそういう文章が収められている。

ゆるいけど深く、冴えているけれど温かいエッセイが並んでいるのだ。

こういう文章が書けるのは、本当にすごいなと思った。たぶん本当に人に伝わったり、人を動かしたり、残っていく文章とか批評家っていうのは、こういうものなんじゃないかと思う。

私はこの1冊を読んで、東さんはこの時代の日本を振り返った時に最も大きな批評家、思想家として残る人になったんだなと確信した。

これからの東浩紀さんの文章がもっと読みたい。