良寛さんと慈悲

慈悲について書いていて、良寛さんのことを思い出した。

 

江戸時代に民衆から慕われた禅僧、良寛さんにはこんな逸話がある。

あるとき良寛さんが通りかかった村に、性格が悪く皆から嫌われている男がいた。良寛さんは彼と会い、誘われて彼の小舟で海へ出ることになった。

洋上へ出ると男は、突然良寛さんを海へ突き落とした。良寛さんは溺れかけ、助けを求めた。

最終的には男は手を貸し、良寛さんは事なきを得たのだが、舟に上がると良寛さんはこう言った。

「本当にありがとうございます。あなたは、命の恩人です」

男はその後、心を入れ替え、自らの行動を改めたという。

 

この話を知ったとき、私はこんな良寛さんのような人になりたいと思いました。

もちろん、おそらく実際にはこんな風にはなれないでしょう。でも、この良寛さんの姿を心に留めて生きたいと思いました。

 

しかし、日常にまぎれているうちに、最近はまた良寛さんのことを忘れてしまっていました。

良寛さんは子供といつも楽しく遊んだ禅僧でした。

私はこの良寛さんの姿を思い出すとき、何か本当に教えられる気がするのです。

こんな風に生きたいし、こんな風にこそありたい。

これは慈悲とは違うのかもしれない。あるいは慈悲なのかもしれません。

分からないけれど、私はこの話が禅の逸話の中で一番好きです。

良寛さんを思って行動するとき、この話の男と同じように、少し自分も良くなれるような気がするのです。

たぶんこの男は死ぬまで良寛さんの姿を忘れなかったと思います。

自分もそうありたい。

いつも忘れずに日常を生きたい。

そう思います。