短編好きが選ぶ「超短編」小説集5冊

 

トイレ本

お題「トイレ本」

 お題に従いましてトイレで読む本「トイレ本」、おすすめ超短編小説集5冊です。

 

私にとってのトイレ本の条件

やっぱりトイレで読むなら

①まずとても短くて

②面白い

③そして色々入ってる

ということになりますので、ここでのお薦めはいわゆる「超短編」や「掌編」と呼ばれる小説集になります。

そして私にとって面白いとはちょっと変な小説を意味しますので、そうしたテイストのラインナップになっております。

 

合わせて、収録されている作品もちょっと紹介。紹介っていっても、超短編だから1作品になってしまうんですよね。

でも大丈夫。

これは批評でもありますから、引用であり、

「公正な慣行に合致する」こと
「引用の目的上正当な範囲内で行なわれるもの」であること

という著作権法第32条の条件も満たしているはずです。

とはいえ問題がありましたらすぐに削除します。

 

 バリーユアグローの短くてヘンな小説たち

一人の男が飛行機から飛び降りる (新潮文庫)

一人の男が飛行機から飛び降りる (新潮文庫)

 

まずこの本は一時期、実際に私の「トイレ本」だった1冊です。本当にトイレに置いてパラパラ読んでいました。

このバリーユアグローという人。こんなのが作家として立派に成り立つのかという感じの人(失礼)。何しろ彼の小説は短く、そしてとにかくほとんど意味分かんないのです。

よく「夢のようだ」とか「悪夢のようだ」とか評されます。でも本人曰く見た夢をもとに書いているわけではないそうです。

でも、だいたいそんな感じと言えば内容は想像がつくでしょう。

考えたら負け。感じろって感じ。頭をほぐして自由にしたいときに読むのがおすすめ。ブッ飛びますよ。そんな風にしてくれる本ってあまりないから。

例えばこんな感じ。『小川』という作品。

 

 小川

 夜になり、私とガールフレンドが眠っている小屋を自警団が包囲する。私はベッドを抜け出し、彼らと対決すべく、寝巻のまま粗末な玄関に出ていく。ぽつぽつと灯った、油っぽい松明の光のなかで、私はそれが自警団ではないことを悟る。それはギリシャ風の衣装を身にまとった女たちなのだ。「こりゃたまげた!」と私はつぶやき、不安な思いでうしろをふり返りながら、階段を下りて女たちの輪のなかに入っていく。

 頭上に木々の茂る砂利道を、我々は急ぎ足で進む。空には特大の、ほれぼれするような月が出ている。我々は道から外れて小川に出る。月光を浴びた小川は、あふれ流れる銀のようだ。その水が青白くきらめくなか、我々は草むらに衣服を投げ散らす。私は一度に一人ずつと組んで、氷のように冷たい水に何べんも飛び込む。ぶるぶる震えながら、息を切らして水から上がる。どきどきと、痛むように打つ心臓を抱えて私はふり返り、丘の上の小屋と、その暗い窓を眺める。

 

意味分かんないからどうせ一度にたくさんは読んでられません。ちょっとずつ読むトイレ本に最適です。 

 

 

 アメリカの超短編小説オールスター本

SUDDEN FICTION―超短編小説70 (文春文庫)

SUDDEN FICTION―超短編小説70 (文春文庫)

  • 作者: ロバートシャパード,ジェームズトーマス,Robert Shapard,James Thomas,村上春樹,小川高義
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 1994/01/01
  • メディア: 文庫
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 短編好きなら読んで損はない1冊。

アメリカで作られた本。

新たなコンセプトで短編小説を出そう、そのためには"short story"や"short short"ではない新しい名前が必要ではないか、ということで色々考えてつけられたのが"Sudden Fictions"というタイトル。

突然始まって、印象を残して終わるようなミニミニ小説、ということで名だたる小説家にお願いして書いてもらったのがこの一冊。

面白い。

訳者に村上春樹が入っているのも嬉しいところ。

ちなみに続編で世界各国の短編を集めてきた「世界編」もあります。日本からは川端康成が収録。 

Sudden fiction (2) (文春文庫)

Sudden fiction (2) (文春文庫)

 

 

 

 カフカはほんとに面白い

カフカ寓話集 (岩波文庫)

カフカ寓話集 (岩波文庫)

 

 やっぱりカフカ、カフカはやっぱり外せない。

不条理文学だ何だと言われるけど、カフカはほんとに単純に面白いんです。何とも言えないユーモアがあります。

この岩波版の寓話集を読んでみてください。変な話だけど何か面白いカフカの良さが分かるはず。

あわせて岩波版の短編集(下記)も読めば、あなたももうカフカファン。

そうなったら白水uブックスの「カフカ・コレクション」全9冊に進んでください。新書サイズなのであまりスペースも値段も張らないし、これでカフカの全作品がコンプリートできます。全集買うよりずっと安い。

そして池内紀さんの訳ですからね。個人的にはカフカの訳は池内さんのが一番好きです。淡々としたカフカの文体を最もよく日本語に置き換えています。

カフカの作品はこのような感じ。

 

「カフカ寓話集」収録『小さな寓話』

 「やれやれ」

と鼠がいった。

 「この世は日ごとにちぢんでいく。はじめは途方もなく広くて恐いほどだった。一目散に走りつづけていると、そのうち、かなたの右と左とに壁が見えてきてホッとした。ところがこの長い壁がみるまに合わさってきて、いまはもう最後の仕切りで、どんづまりの隅に罠が待ちかまえている。走りこむしかないざまだ」

 「方向を変えな」

と猫はいって、パクリと鼠に食いついた。

 

不条理で乾いた中にも、どこかユーモラスな感じもあるカフカの世界。

ああやっぱりカフカはいいなぁ。

カフカ好き。

 

カフカ短篇集 (岩波文庫)

カフカ短篇集 (岩波文庫)

 

 

 

断食芸人―カフカ・コレクション (白水uブックス)

断食芸人―カフカ・コレクション (白水uブックス)

 

 

 

 村上春樹×糸井重里の超短編 

夢で会いましょう (講談社文庫)

夢で会いましょう (講談社文庫)

 

 村上春樹×糸井重里、なんと豪華なコラボでしょう。

これは二人がカタカナ語をお題にしてとても短い小説のような文章を交互に書くという企画。

なんとも不思議な小説がたくさん。

色々入って楽しい1冊です。

説明は不要、この二人が書いて面白くないはずがない。

しかし春樹の超短編集ならもう一冊。

下記の『夜のくもざる』もとても良い。こちらは村上春樹単独の超短編集。故・安西水丸さんのイラスト。

特に最後に収録の『夜中の汽笛について、あるいは物語の効用について』が良い。静かで、温かみがある。この作品のためだけでも買って価値のある一冊。

 

夜のくもざる―村上朝日堂短篇小説 (新潮文庫)

夜のくもざる―村上朝日堂短篇小説 (新潮文庫)

 

 

 

日本発、超短編集の決定版

超短編アンソロジー (ちくま文庫)

超短編アンソロジー (ちくま文庫)

 

最後に、さまざまな超短編を集めたものならこれ。これが一番バランスが良くておすすめ。

古今東西を問わず、超短編を愛する編者が編んだ渾身のアンソロジー。

夏目漱石や一休から桂枝雀、オスカーワイルドにボードレール、シベリア民話やマヤの神話まで、その内容はとにかく多種多彩。収録数もかなりあります。

満足すること間違いなし。

もっと評価され売れるべき本です。

みなさん購入してあげてください。この人はもっと評価されるべきだ。

 

 

以上!  短編は素晴らしい!

以上!  結局5冊以上になってしまいましたがご愛嬌。

私も短編が好きで結構熱心に読んできました。短い時間でちょっと読めるし、気軽に開けるし、読み返したりもしやすい。

忙しい現代人にはぴったりだという気がします。

ここでお薦めした本にはどれも色んなお話が入っていて、1冊あれば飽きずに読めるというのが嬉しいところ。

短編集ですから別に前から順番に読む必要もないわけです。適当に開いて楽しむ、そして閉じておしまい。

これがいいですね。

魅力的な短編集や短編作家は他にもいくらでもありますけれども、トイレ本で選ぶなら私ならやっぱり上記の5冊です。

久しぶりにそれぞれパラパラと開いて読んでみて、改めて小説っていいなと思いました。

トイレ本、良いコンセプトですね!