映画『ダンケルク』感想(ネタバレなし)

クリストファー・ノーラン監督最新作『ダンケルク』を観ました。ネタバレはもちろんなしで雑感を記します。

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実話、戦争映画を撮っても、クリストファー・ノーランここにありという堂々たる一本でした。

 

戦争映画は、定期的に観ないといけないなと改めて思いました。戦争ってやっぱり無数の個人の絶望で構成されていて、それはもう自分がここでいま死ぬとか、簡単に一瞬で吹き飛ばされて終わりとか、そういうことなんだけれど、それは何もない状態でただ想像するのはかなり難しい。

少しでもヒリヒリと焼けるような切実な感覚でその絶望を知るには、優れた戦争映画を観るのは良い方法なんじゃないか。もちろんそれだけでは全く足りないけれども、戦争を考えるとき、平和な日常ではどうしても思弁的だったり大局的な視点になる気がする。だからどこまでも個人的な絶望を追体験しておくことは、必要な作業ではないかと思う。

 

『ダンケルク』を観て一番感じたのは、そういうことでした。

全体の中では個人の絶望なんか本当にちっぽけで、でも本人にとってはそれは自分の命が終わるという最大限の、極限の絶望なわけです。しかし、全体の中ではやはり極小の無数でしかない。

個人の小ささや無力さ。そういう絶望がある。

それでも、その絶望を救うのもやっぱり別の小さな個人だったりもするのだ。

そしてそこには希望も誇りも涙もある。

でもやはり、結局はそれだけで済むような甘い話では全くなくて。

でも、同時にその全体は、確かにその無数の個人によって動いていくことも事実としてまた残る。

そのあたりの反転や非情さや希望が、非常によく描かれている映画でした。この点において、戦争映画として出色の出来だと思います。私はノーランの誠実さを感じました。

 

映画としての構成もしっかりと組まれていて、全く飽きさせずに引っ張り、かつ複雑になりすぎない形で戦場が一本に凝縮されている。

何だかノーランはもう巨匠なんだなという風格すら感じる作品でした。