いよいよクリストファー・ノーラン監督の最新作『ダンケルク』が公開されるということで、彼について書かずにはいられませんでした。大ファンです。
映画って、日常で嫌なことがあっても忘れられたり、次の作品を見るまでは日常を頑張ろうって思えるありがたい存在です。そんな風に彼の作品を観てきた私の、おすすめ3作品を簡単に紹介いたします。ネタバレはありません。
第3位 『メメント』(2000年、113分)
ラテン語に「メメント・モリ(Memento Mori)」、「死を忘れるな」という言葉があります。これを題とする小説をもとにした一本。
ノーランの監督2本目で、113分と時間も短く、製作費も少なめ。だからこそクリストファー・ノーランの底力がいかに凄いかを感じられる作品です。
主人公は妻を殺害され、その復讐に犯人を探し出して殺します。ストーリーはこれだけ。しかしこの1本を一級品たらしめているのは、最後に復讐を果たした場面から映画がスタートすることです。そして映画はストーリーをさかのぼっていきます。時系列が逆になっているのです。
実は主人公は妻を殺された事件の際、記憶が10分しかもたない状態になっています。その中で、何とか手がかりを集めて犯人に辿り着こうともがいていく。写真を撮り、メモを書き、身体に入れ墨をいれ、何十分後か何時間後かの自分にメッセージを残しながら必死に前に進んでいくのです。
その様子を、場面を細切れにしながらさかのぼって描いていきます。この手法によって一気に物語に緊迫感と面白みが生まれ、記憶が10分で途切れながらどう次につなげていくかという、主人公の感覚すら味わえるようになっています。
派手なCGなど使わなくても映画のつくりでここまで違いを出せるのかという、監督としての地力を感じさせられる1本です。
第2位 『ダークナイト』(2008年、152分)
間違いなく2000年代最高の映画の1本でしょう。
ノーランのバットマン三部作の2作目。しかしこの作品からでも問題なく観られます。
バットマン、アメコミ、ヒーローものということでただの勧善懲悪的なSFアクションだろうと想像すると、裏切られます。圧倒的な深みがあります。
冒頭からまさに息もつかせぬ展開。綿密に計算されたストーリーで中だるみする暇もなく全部持っていかれます。没入できる映画という点では100点満点でしょう。
ハロウィンのコスプレなんかでもよく見る「ジョーカー」が悪役で出てくるのですが、描き方が秀逸の一言。
大規模なテロリズム的混乱が進むにつれ、これがもし実際に起こったら自分はどう考えるのかという問いかけを感じるほどに、ストーリーは説得力を持っていきます。「悪って何だ?」という素朴な疑問すら身に迫ってくる。
バットマンを題材としてこれだけのリアリズムとエンターテインメント性を両立させた手腕は、まさに天才的です。
第1位 『インセプション』(2010年、148分)
1位はこれしかない、『インセプション』。レオナルド・ディカプリオ主演、渡辺謙も出演ということで話題になりました。一言でいうと、ハリウッドの最良の部分が集まるとこういう作品になるんだなという1本。
ハリウッド作品って、ただ莫大な金をかけてCGでド派手にやっただけ、という感じの映画も少なくない。しかしその可能性を本物の才能が使うと、 やっぱりハリウッドは世界最高レベルであり、究極の映画体験になると知らしめられます。
物語は産業スパイによる情報戦。意識をつなぐ機械を使って相手の夢に潜入する手法で、主人公たちはミッションに挑みます。
夢が舞台なので原理的には何でもあり。かつ展開や伏線は非常に巧妙かつ謎めいていて、ほとんど幻惑的なほどです。
ある人の夢に入り込み、その夢の中で見る夢にまた侵入し、という風に階層を下っていく構造や、それらを現実と連動させる設定など、とにかく仕掛けが抜群。一体どれが夢でどれが現実なのか分からなくなる感覚が、これ以上ないほどリアルに描かれています。これぞまさに映画体験。
2回目の鑑賞に堪え得るどころか、3度目、4度目のリピートを誘う稀有な作品です。
『ダンケルク』が楽しみ!
クリストファー・ノーランは決してありきたりなことをせず、自分の手法を洗練させ続けてきた監督です。今回は初の戦争映画ということで、またジャンルを広げてチャレンジをしています。
間違いなく今までの戦争映画とは何かが違うはずです。何が違うのか、何を見せてくれるのか、楽しみで待ちきれません。
個人的にはいつ観に行けるかが問題なんですけども、でも気持ちはもう映画館です!